大切に使い続けるモノ

20代の頃、両親の結婚記念日のお祝いにペアウォッチを姉と一緒にプレゼントしたことがある。
記憶が今や定かではなくなっているのだが、計算からすると30周年だったのだと思う。
母は今でもずっと使い続けてくれている。
その時計が電池は変えたのに、たまに秒針が止まるというので、母の病院の帰りに百貨店の時計売り場に一緒に確認に行ってみた。
「あー、もうこれ30年くらい経ってますよね。ちょっと部品もないんじゃないかなー」
お店の方は、最初、修理は無理じゃね?!的な対応。
でも裏を開いて中を確認して下さると
「あ、部品まだ大丈夫ですね。費用は25,000円くらいになりますよ。」
母は大事な時計だからお願いするわ、と。
そうして、お店の方が手続きに入ると、
「あー、これ2008年にこちらでオーバーホール承ってました」
とのこと。
待っている間、母は
「前に近所でお願いしたことがあってその時は確か15,000円くらいだったけど、やっぱりデパートは高いわよね。でももう時計の修理屋さんってなくなっちゃってるから仕方ないのよね、、」
なんて言っていたところだった。
母の歳のせいもあるだろうけど、まあ、いずれにせよ記憶なんて曖昧なものだ。
お店の方もその事がわかるとなんだかんだ対応に親切度が増してきた感じがした。
それはイブサンローランの腕時計ではあるけど、ブランド名がついているからって飛び切り良いものというわけでもない。
最初のお店の方の対応からしたって、使い続けるのはどうかと、、的なニュアンスが感じられた訳だし。。
そう、今ってモノを使い続けることの方が難しいことが多い。
そんな中、記念品のプレゼントというのもあるけれど、大切にオーバーホールまでしながら使い続けてくれていること、そのことにお店の方まで一緒に喜んでくれたように感じて嬉しくなった。
もちろんお店の方はどう大切なのかは知らないし、単にリピートの顧客という意味でだけだったかもしれないけど。
こういうモノを大事に使い続けるって、私自身とっても憧れる生活だ。
が、結局はなかなかそうもいかず、使い捨てになりがち。
母が私たちのプレゼントをずっと大切にしてくれていることが嬉しかったと同時に、こういうことの大切さをしみじみと感じさせてもらったのだった。